STOの衝撃 / セキュリティトークンが起こす金融アセット革命

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1.STO(セキュリティトークンオファリング)元年

2017年は仮想通貨とICOブームに世界の仮想通貨投資家とビジネスプレイーや開発者が熱狂しました。強烈なマーケットの冷え込みを経験し、2018年には「セキュリティトークンオファリング(STO)がブロックチェーン業界の次のBig Thingである」という言葉を、よく聞くようになりました。7月には世界最大の仮想通貨取引所であるBinanceとMaltaの株式取引所Malta Stock Exchange (MSX)がパートナーシップを締結し、証券規制に対応し、非中央集権性も確保する、分散型のセキュリティトークン取引所の設立を目指すことを発表しました。日本ではICOコンサルティングサービスを提供する木村新司氏率いるAnyPayがセキュリティトークンオファリングによる資金調達を目指す企業が規制に対応した、セキュリティトトークンの発行をサポートするシステムを年内にリリースすべく開発していることを明らかにしました。また、米国の上場企業Overstockを親会社として持ち、同じくセキュリティトークンのプラットフォームを構築するtZeroは8月に自社のSTOを終了し、金額は非公表ながらも数百億円の資金を調達しました。

他にもSTO関連のプロジェクトのリリース状況は増えてきており、筆者の耳にも、エクイティやVCファンドの持分をトークン化して売り出す調達事例の紹介や相談が増えてきています。

執筆を開始した2018年8月時点で、日本ではSTOに関するメディア報道やブログ記事は数えるほどしかありません。一方で、英語のリソースでは数多くのSTO関連のニュースや、有用なまとめ/考察記事や動画メディアを数多く発見することができました。今回のエントリーではアクセス可能なリソースからの調査や、実際にPolymathやCEZEXのキーパーソンにインタビューを行い記事を作成しました。

2.フィンテックを振り返る

日本では仮想通貨やブロックチェーンという用語を聞くときに、それがフィンテック領域の一つであることがあまり強調されません。これは、投機的な側面ばかりが強調される日本の仮想通貨市場の特有かもしれません。今回のエントリーで紹介するSTOも、仮想通貨もICOもフィンテックの文脈で語られるべきだと筆者は考えています。フィンテックの領域では、すでにとても多くのビジネスが立ち上がり、ユニコーン企業が誕生しています。以下は主要な領域と代表的な企業です。

・電子マネー

・決済/送金

・投資/資産運用/保険

・クラウドファンディング

・ソーシャルレンディング

・中小企業、個人向け融資

・会計/経理

・家計簿/貯蓄

(フィンテックユニコーンの一例)

Stripe、TransferWise、Revolut、Affirm、Adyen、Clover、Robinhood、Oscar、Tuandaiwang、Kabbage、Avant、Credit Karma、Gusto、AvidXchange、Lu.com、PayTm、SoFi、Klarna、Zenefits、Coinbase、NuBank、UiPath など

これらのフィンテックユニコーンは急激な成長を見せつつも、世の中や人々の生活の在り方を劇的に変化させるほどのインパクトは起こしていません。その原因の1つとして、これらの企業が、結局は伝統的な古い金融システムや、コストが高い送金ネットワークを前提としてサービスを提供する必要があり、その点において、アダプションのハードルが生じたり、インパクトが削られてしまったりするという課題が存在しました。

そのような状況の中で、この数年間で急激に成長したのが、ブロックチェーンと仮想通貨です。仮想通貨やブロックチェーンが他の領域のフィンテックと一線を画すのは、その性質から、前述したような伝統的な金融機関のインフラストラクチャーに依存することなく、その”イケている”サービスの提供を、完結し得る可能性があることです。

現在、仮想通貨は普及の途上で多くの乗り越えるべき課題がありますが、仮想通貨による決済が日常レベルで普及すれば、古い金融インフラによる制約のないサービスを提供できる環境が実現する可能性が十分にあります。

仮想通貨、ICO、そしてSTOといった領域と、フィンテックにおける電子マネーとクラウドファンディングの領域はとても関連性が高いです。この2つの領域で先行して取り組むプレイヤーが存在したことは、仮想通貨そのものの利用、そして、それを用いたオンラインでの資金調達であるICOや、今回のSTOというコンセプトが市場に提案される時点において、利用者の抵抗感を大幅に減らす役割を果たしたのではないかと筆者は考えています。

仮想通貨やブロックチェーンをフィンテックの文脈から考えることは、関連する市場や規制、その歴史、さらに、今後の市場でどのような動きが起こり得るのかを考える時により広い視点と洞察を与えてくれます。

3.急成長した仮想通貨市場とSTOへの発展

2018年9月の執筆時点で、仮想通貨市場の時価総額は26兆円程度(コインマーケットキャップ調べ)です。2018年1月のピーク時には80兆円を超えていました。2年間の成長を見ると、現在の低迷している価格水準においても、2年前からは20倍ほどの成長、そして2017年12月から2018年1月の相場のピーク時点の価格水準では40倍ほどにも成長していました。

その内訳をみると、ビットコインが13兆円ほどの時価総額で、全体の約50%を占めています。

その規模の大きさを比較するために、ビットコインと”価値の保存”という側面からよく比較される金(ゴールド)の時価総額は800〜900兆円、 “価値の移転”という側面から比較される決済大手のVISAは30兆円ほどです。ゴールドの価値には遠く及びませんが、世界的なクレジットカード企業のVISAの規模には肉薄しているのです。

過去、数年の仮想通貨市場の変遷を振り返ると、大きく3つのフェーズに分けることができます。

第一フェーズ:ビットコインとアルトコインの流行 : 仮想通貨

第二フェーズ:ICOブーム、仮想通貨取引所の増加 : アプリケーションとインフラ

第三フェーズ:NEXT???

第一フェーズでは運営主体を必要とせず、非中央集権性が高いネイティヴな仮想通貨としてのビットコインや、そのビットコインに機能を追加/改善しよう開発されたアルトコインが登場しました。

“全ての取引記録が公開され、誰でも参加可能な、フェアで民主的。銀行ネットワークを通さずP2Pで自由に送金可能。政府が介入できない” という新しいカタチのお金を試す壮大な社会実験が始まりました。

ビットコインの後を追うように、2011年にはライトコイン、2014年にはイーサリアムが誕生しました。この時期はリーマンショックや世界的な金融不安から立ち直ろうとする時期でもありました。2017年にはビットコインからハードフォークするカタチでビットコインキャッシュが誕生しています。その他にもビットコインのソースコードをベースとした様々な種類の派生コインが誕生しました。

第二フェーズではICO(イニシャルコインオファリング)が大流行します。ICOは仮想通貨に次ぐ、ブロックチェーンの代表的なアプリケーションでしょう。ICOは企業や団体がブロックチェーン上で、様々な機能や役割、権利を持たせた独自のトークンを発行し、それらを投資家に売り出すことで開発/運営資金を調達する新しい資金調達方法です。

最初の代表的なICOはイーサリアム自身が2014年8月に実施し、約1500万ドルを調達しました。2016年にはDAOが100万ドル以上を調達(その後ハッキング被害に)しました。その後、様々なプロジェクトがイーサリアム上でICOを実施しICOratingのレポートによると2017年には6,000億円以上もの金額がICOを実施したプロジェクトによって調達されました。現在、仮想通貨やICOトークンを掲載するコインマーケットキャップでは1900種類以上のトークンがリストされています。

そして、時を同じくして、このICOトークンを取り扱う仮想通貨取引所が相次いで立ち上がりました。コインマーケットキャップでは219もの仮想通貨取引所の存在を確認することができます。2018年に入っても、新しい仮想通貨取引所のオープンが続いています。

第三フェーズと称することが適切かはわかりませんが、これまでのフェーズで整備されてきた仮想通貨エコシステムのインフラストラクチャー、ICOが調達した資金で取り込んだ開発者、ユーザーをベースにして、様々な応用的なアプリケーションやビジネスが誕生することが予想されます。技術的な側面からは、スケーラビリティ問題の解決にアプローチする技術の完成、高度なスマートコントラクト制御によるdApps(分散型アプリケーション:ゲームやビジネスアプリケーションでの応用が期待される)やDEXと呼ばれる分散型取引所とそれを支えるプロトコルの開発動向に注目が集まっています。そして、市場拡大のカギとして、密かに大きな盛り上がりを見せるのがSTO(セキュリティトークンオファリング)です。

4.STO(セキュリティトークンオファリング)を解説

4-1. STOとはどのような資金調達方法なのか

STOはその名前の通り、英語で証券を意味するセキュリティ(Security)に分類されるアセットにまつわる契約と権利をブロックチェーン上のトークンに表章させ、発行したトークンを投資家に売り出すことで、プロジェクトや企業、そしてファンド等が資金調達を行う方法です。

セキュリティトークンとして販売される代表的なアセットには以下があります。

・株式(エクイティ)

・債権(ボンド)

・集団投資スキーム(ファンド)

・金融派生商品(デリバティブ)

これら以外にも、不動産やシェアリングエコノミーでの応用等、これまでの金融技術では実現できなかった、または効率が悪かった様々なタイプのアセットのセキュリティトークン化が計画されています。最近では絵画の所有権をトークン化することで小さい単位に分割し、オークションで売り出す事例がありました。

一般的なICOで販売されるユーティリティトークン(後述)とSTOで販売されるセキュリティトークン決定的に異なるのは、セキュリティトークンは原則として何らかのTangible(有形)な資産によってトークンの価値が裏付けされていることです。この性質から英語ではAsset Back Token(アセットバックトークン)と呼ばれることもあります。例えば、株式をセキュリティトークン化するのであれば会社の議決権や配当、残余財産の分配を受ける権利を契約としてトークンに設定します。資産の裏付けは会社の財務諸表上の純資産です。債権であれば利息の受取と元本の償還を受ける権利を契約としてトークンに設定します。トークン価値の裏付けは債権の額面金額であり、債権者の権利として債務者である企業や人物の保有する資産に対しての担保設定や、満期や一定のイベントの発生時に行使できる償還請求権を持ちます。債権者保護の観点から法令に基づいて様々な権利も与えられます。ファンドのSTOであれば保有するトークンは払込資金に応じたファンド持分を表するものであり、株式同様に配当や残余財産の分配を受け取る権利を契約としてトークンに設定することができます。資産の裏付けはファンドが投資する株式や債権といった金融資産です。

STOのコンセプト自体は実はあまり複雑なものではなく、これまで一般的な金融の世界で行われていた契約や取引を、ブロックチェーンを活用して、より効率的にし、進化させるというものです。

また、これまでのICOにおいて販売されてきたユーティリティトークンについては、昨今、「ICOトークンが証券なのか」という議論が頻繁になされていますが、この証券該当性を測定する際に用いられるHoweyテストによると、以下のような基準で判断が行われています。

  • 利益を期待しているか
  • 投資性があるか
  • 企業が発行しているか
  • 利益を得るための努力が存在するか

よくホワイトペーパーを読む方であれば、ほとんどのICOトークンが該当していることがわかります。実際にアメリカのSECは、今年に入り、ほとんどのICOトークンは証券であるという見解を示し、密かに返金を命令する等の対処を行なっています。この点から考えると、「ICOも販売しているのが実質的に証券なので、STOである」と考えられ、間違ってはいないのですが、やはり両者には発行するアセットの性質に決定的な違いがあります。この両者の違いについては詳しく後述します。

そして、規制の観点から考えると、セキュリティトークンが対象とするアセットのほとんどは伝統的な金融商品であり、多くの国でその発行と販売において規制が存在し、金融当局の監視下におかれます。アメリカであればSEC(米国証券取引委員会)、日本であれば金融庁が監督し金融商品取引法や会社法によって規制されています。

スタートアップ企業が資金調達の方法としてICOを選択してきた一つの大きな理由は、「規制がない、もしくは実行のハードルが低く、低コストで、グローバルに資金調達ができる」ことが理由でした。

証券の発行や販売時に課される登録、ディスクロージャーや監査、内部統制整備などの明示的な要求がなく、グローバルに資金を調達することができること、そしてベンチャーキャピタルなどの出資に際して会社の支配権を諦める必要がない、とても都合のよい資金調達方法だったからです。この状況はICO市場を爆発的に成長させると同時に大きなダウンサイドを生み出しました。

ICOとSTOを別物と考えた時に、ICOは規制を回避しようとする傾向がある方で、STOは規制に適合しようとしている姿勢がより強いことがわかります。証券の発行と販売に関する規制、そして業界構造への深い理解、それらへの対応能力はセキュリティトークンを運用する上でとても重要です。後に紹介するセキュリティトークンの発行をサポートするプラットフォームでは、多くのケースで法律や会計に関する専門家のサポートがバンドルされています。

4-2. ICOブームが生み出したダウンサイド

ICOが生み出したダウンサイドに言及する前に、大前提としてICOというコンセプトは素晴らしく、グローバルに低コストで資金調達を行うことができる革命的な手法であるという点を強調しておきます。筆者はこのICOの登場に熱狂し、投資を行ってきた一人です。その資金が生み出した熱狂と、イノベーティブなチャレンジに対して、今でも変わらずに大きな期待を寄せています。コンセプトや技術は素晴らしい一方で、ダウンサイドが生じるのは成長痛とも言えるのではないでしょうかとも考えています。

フィンテックの視点からICOを整理すると、筆者は「ICOは、仮想通貨というグローバルでボーダレスな電子マネー決済の仕組みと、透明性が高いブロックチェーンという公共データベース上で発行するトークンという新しいタイプのアセットを、これまでのクラウドファンディングの仕組みに組み込むことで進化させた」と、考えることがあります。経済学からの整理や、ファイナンス技術からの整理もできるでしょう。

このICOによる”グローバルクラウドファンディング”の仕組みは、「利益を追求しない分散型のアプリケーションや技術」を開発するオープンソースプロジェクトやブロックチェーンスタートアップが資金調達を実行できる貴重なオプションを提供しました。イーサリアム財団がICOを行った一つの理由は、株式による資金調達が適さなかったからです。ブロックチェーンの根底にあるコンセプトが「分散型」であるがために、組織のコントロールが株主に寄ってしまう株式会社という機構はなじまないことが多いのです。裏を返せば、分散型の運営を目指す上で、数億円という開発資金を調達する方法はICOしかなかったとも考えられます。

そして、投資家目線では、ICOは証券会社に口座を持たずとも、仮想通貨のウォレットを持つことができれば、誰でも参加することができる非常に民主的な資金調達方法です。筆者個人も仮想通貨を保有する以前に証券口座を持ったことがなく投資経験はゼロでした。ICOはそのハードルの低さから若い世代を中心に多くの新しい投資家を市場に誕生させました。

想像にたやすいように、ICOブームはこの投資経験が少ない、ニューカマーを巻き込むことで、大きなダウンサイドを生み出しました。輝かしい成長を見せるICOプロジェクトとロケットのようなチャートが描かれる影で、前項で言及したようなICOに関する規制の不在、規制の曖昧さを利用して、調達した資金を私的に流用するような詐欺的なプロジェクト、そして過大なバリュエーションによって無責任に必要のない巨額の資金を調達するプロジェクトが相次ぎました。2018年には仮想通貨市場全体の急激な冷え込みによって、トークンの価格が10分の1から20分の1まで落ち込むプロジェクトが相次ぎ、多くの投資家が損失を被りました。

前述のように、ICOプロジェクトはディスクロージャーが法的に要求されておらず、ほとんどの投資家はプロジェクトの実態がわからないのが現実です。そして、ICOで購入するユーティリティトークンには、投資家が企業やプロジェクトの意思決定に関与したり、帳簿の閲覧を請求したり、解散時に残余財産の分配を受ける権利等は設定されておらず、不条理に大きな損失を被っても投資が行使し得るオプションが存在しません。自主的にプロジェクトが情報を公開したり、調達資金の運用ポリシーを設定し、遵守することに期待するしかありません。これらの課題を解決するための新しい取り組みの一つとしてイーサリアム創始者のVitalik Buterin氏が提唱したDAICOというコンセプトやそれを組み込んだICOプラットフォームであるICOVO(https://icovo.co )というプロジェクトも登場しています。

さらに悪いことに、反社会的組織やテロ組織もこのスキームや仮想通貨のエコシステムを悪用し始め、マネーロンダリング(AML)やテロ組織の資金源(CFT)となるリスクも各国の規制当局が考慮せざるを得ない状況になりました。その要請やリスクの顕在化にともない、ICOを実施するプロジェクトは一斉にKYC(本人確認)を行うようになりました。

4-1.にて「証券該当性」について言及しましたが、SECにおいてICOトークンの証券該当性については2017年から2018年に集中的に議論がされました。すでに述べた通り、結論として「ほとんどのICOトークンは証券に該当する」という言及がなされています。最近でも、米国の裁判所が同様の見解や命令を出すことが増えてきています。

米国には個人投資家の保護を目的に、様々な資金調達に関連する規制が存在します。特に証券の販売については厳しい規制と違反時の制裁金が設定されています。SECはICO実施企業への警告、命令を行い、悪質な事例では逮捕に踏み切っています。2017年から2018年に実施されたICOのウェブサイトとトークンセールの実施要項を見ると、ほとんどのケースで米国の投資家のセールへの参加を禁止する条項を発見することができます。実際には、米国の投資家を相手にICOトークンを販売する場合に、レギュレーションの例外規定に基づき申請を行い、機関投資家や適格投資家にのみ販売するといった手法でユーティリティトークン(米国では証券)の販売を行うことはできますが、実際には、ほとんどのICOプロジェクトは明示的に米国の投資家を排除することで、このリスクを最初から回避することを選択しています。

アメリカ以外でも投資家が多額の資金を詐欺的なICOによって失ったり、長期間に亘って資金を拘束されたりする事例が生まれてしまいました。デジタルで実体を持たず、技術的にも理解が難しく、耳触りが良い、「ブロックチェーン」は詐欺やねずみ講と相性が抜群に良く、この2年間筆者の耳にも数え切れないほど、この類の話が入ってきました。

現在のICOの仕組みは、多くのケースで法規制を回避、ないし抜け穴をつくものであり、事実上、投資家保護の仕組みや規制が存在しません。投資は、仮想通貨の秘密鍵の管理がそうであるように、本質的にどこまでいっても「自己責任」なのですが、市場が爆発的な成長を見せた中で生まれた不健全性が、これからの市場の成長のボトルネックになっています。

このような状況では大きな資金の流入によるさらなる市場の成長は見込めないと、様々なプレイヤーが考えていました。各国がICOの規制方法を模索する中、「グローバル資金調達」や「早期流動性の確保」、「低コスト」といったICOのメリットを残しつつ、規制にも対応した資金調達方法としてSTO(セキュリティトークンオファリング)の登場が期待されるようになりました。

4-3. ICOとSTOの比較

STOをよく理解する上で、引き続きICOとの比較から考察することが効果的です。

まず、共通点としてはどちらもブロックチェーン上でスマートコントラクトによって規定されたデジタルアセットであり、プログラマラブルで、トレードが可能であるということです。ICOでは多くのケースではイーサリアムのERC20という標準規格がトークンの発行において用いられています。” コントラクト” という言葉からも想像できるように、ブロックチェーン上のトークンとは契約であり、その契約がプログラムによって実行されています。「どのアドレスが発行したか」、「どれだけの量のトークンを発行するのか」、「制限なく第三者に譲渡できるのか」、といった発行・運用に関する契約がプログラムで規定されます。

イーサリアムのスマートコントラクトはその性質上、一度ブロックチェーン上にデプロイすると変更することができません※。そして、デプロイされたスマートコントラクトのプログラムは誰もが確認することができます。(注:スマートコントラクト自体を乗り換えてトークンをアップグレードすることは可能です)。

この透明性と変更不可能性という性質が担保されることで、ICOやSTOがワークするのです。

仮にトークンのコントラクトを発行者や第三者が恣意的に変更することができるのであれば、そのトークンはある日、突然無価値になるかもしれません。そして、そのプログラムが公開されていなければ、契約の実行性やプログラムの安全性を投資家が検証することができません。

そして、もうひとつICOのスマートコントラクトによって規定されるのが、購入/出資金の払込およびトークンの発行/割当です。ダッシュボードを使うことで、スマートコントラクトを利用するICOは減ってきましたが、多くのICOで、この払込プロセスが、スマートコントラクトでプログラム化されています。

具体的には、発行主体が用意するAというイーサリアムのアドレスに、出資したい金額のイーサリアムを送金することで、その金額に応じたトークンが購入者/出資者のイーサリアムのアドレスに自動的に送り返されるというプログラムがスマートコントラクトで規定されます。

スマートコントラクトを説明する時に自動販売機を用いた説明がよく行われますが、120円入れて、ボタンを押すと、ジュースが1本出てくるというシンプルな仕組みと同様に、120円分のイーサリアムを送る送金トランザクションを実行すると1トークンが戻ってくるというものです。自動販売機は誰もが「どう動くのか」という仕組みを知っているので、安心してお金を入れることができます、スマートコントラクトは改ざん不可能性と検証可能性を提供することによってこれを実現しています。

このスマートコントラクトを用いてトークンを発行し販売するという点はICOとSTOで共通しています。

ふたつのトークンで異なる点としては、すでに導入部分で言及した通り、発行されるトークンの性質が根本的に異なります。この性質の違いからICOで発行されるトークンは「ユーティリティトークン」と呼ばれます。STOで発行されるトークンは「セキュリティトークン」と呼ばれます。

ユーティリティトークンは多くのケースで「将来、提供されるサービスやプロダクトにアクセスできる権利」として発行・販売がされています。

例えば、コンピューティングリソースをブロックチェーン上で取引できるプラットフォームを開発するケースでは、そのトークンは将来プラットフォームが完成した時に、プラットフォームを通じてオンデマンドでコンピューティングリソースを購入する際に利用できるクーポンやクレジットとして扱われるというトークンの設計を行います。

多くのプロジェクトはICOに参加するキャピタルゲインを目論む投資家に対して、購入するインセンティブを与える為に、一般的にはトークンに発行上限を設けたり、独自トークンによる決済時に割引を設けたりすることをトークン設計に盛り込まれます。また、証券該当性はかなり上がりますが、ビジネスで生み出された利益を原資に市場からトークンを買い戻すことを投資家に約束するプロジェクトも存在します。これは、発行上限を設けつつ、利用者の増加によるトークンの需要増や、利益を用いたトークンの買い戻しと消却(バーン)による供給の削減によって、トークン価格の上昇が起こり得るようにするトークンのメカニズムです。

このユーティリティトークンについては、多くの購入者の思惑や期待に反して、プロジェクトが発行するホワイトペーパーでは、「投資を目的として購入するべきものではない」という記述が頻繁になされています。これは、投資を意図するニュアンスを記述的に回避することで法的に証券に該当することを回避することを意図しています。前述の通り、ICOトークンは運営主体の企業の意思決定に関する議決権も、生み出された利益に対しての配当請求権も有しませんが、これは裏を返すと証券発行に関連する規制を回避するための設計でもあるのです。

ユーティリティトークンのジレンマは、立て付け上は投資を意図する商品ではないので、値上がりを意図するような記述やそれを明示的に訴求するプロモーションを展開することはリスクがありできない一方で、ICOでトークンを販売して資金調達を成功させるために、トークンの値上がりメカニズムの存在を予測し得る設計とその実現戦略を公開することで、示唆的に投資家の期待を高めます。ここにはマーケティングとコンプライアンスのトレードオフが発生しています。

一方で、セキュリティトークンは最初から発行するトークンが証券に該当することを前提にしています。発行に伴い、課される関連規制に対応することを前提に投資を募り、生み出した利益の分配を設計に明示的に組み込んだトークンを発行し、規制の範囲内の方法で投資家に訴求を行います。株式をトークン化するのであれば、その権利は議決権や配当請求権であり、ホワイトペーパーにはプロジェクトがどのようなビジネスモデルを展開し、どの程度利益を生み出し、投資家に還元するのかといった計画を公開し、資金を募ります。資本主義の仕組みや会社法をご存知の方であれば、ここに特段の違和感はないでしょう。そして、債権であれば、債務として引き受ける企業の財務状況やビジネスモデルが公開され、引受リスクに応じた支払利息率が設定されます。ファンドであれば、どのような企業やプロジェクト、金融商品に投資をするといった投資計画がプレゼンテーションされます。

ここで、共通するのは投資家がアクセプトしたリスクに応じて、利益の分配や利息の支払いを受ける権利が契約によってトークンに明確に規定されるということです。これまでの仕組みと異なるのは、発行時に課される手続きや、利益の配当や利息の支払いといったプロセスを、スマートコントラクトを用いることで、拡張性、効率性、確実性、そして透明性の向上と確保を実現しようとするのがSTOです。

最後に、規制の違いです。ユーティリティトークンを用いたICOという資金調達手法は新しい方法であるが故に、規制が存在しない、突貫で作られた曖昧な規制によって運用されています。現在でも日々、各国で検討や法制化が進んでいます。一方で、セキュリティトークンはベースとして伝統的な金融のレギュレーションに依拠します。投資家は法律に基づいて投資家としての権利を有し、規制によって投資家保護が図られます。STOは新しいテクノロジーを活用するので、その部分に対しては、新たな規制や運用ルールを考案し、ルールの整備を行う必要がありますが、その根底にあるのは、近現代に亘って、アップデートを繰り返してきた既存の金融関連のレギュレーションです。

4-4. STOのメリットと革命的な特徴

STOはICOに続くブロックチェーンの「Next Big Thing」と呼ばれ、金融の世界に大きな変化をもたらすと言われています。その利点を考察していきます。

4-4-1. 投資市場の拡大と流動性の増加

前述したようにSTOによってトークン化されるアセットの多くは、現時点ではイーサリアム上のトークンです。ICOで一般的に用いられるERC20とは異なるSTOに適した新しいトークン規格が次々と提案されています。これらのトークンはMy Ether Walletなどのイーサリアム対応ウォレットで保管することが可能です。STOに参加する投資家は証券会社や証券トークン取引所の取引アカウント、そしてカストディアンにセキュリティトークンを保管するオプションのほかに、自らがプライベートキーを管理するウォレットにセキュリティトークンを格納するオプションが存在します。そして、このイーサリアムのアドレスはインターネットに接続することができれば誰でも作成することができます。

トークン化の対象となるアセットの種類や、発行時に適用されるそれぞれの国の規制によって、STOのプライマリーに参加できる投資家の種類やレイヤーは異なり、付随してセカンダリーマーケットでトークンを譲渡できる相手にも制限が設けられる可能性(例:適格投資家間での流通に限定する)は当然に存在しますが、この「イーサリアムのアドレスは誰でも持ち得る」という性質によって、セキュリティトークン市場への参加のハードルはこれまでの金融市場のそれよりも圧倒的に低くなり、世界中から新たな投資家を市場に呼び込むことが期待されています。特に、ICOへの参加でユーティリティトークンに慣れ親しんだ層にとっては、セキュリティトークンを、自らのウォレットで扱うことは難しくないでしょう。

そして、セキュリティトークンの最大のメリットは流動性の確保です。ICOに参加していたような新しい投資家層の参入もその一因です。そして、その流通経路が多様化できることも流動性を大幅に増加させ得る一因です。仮想通貨のOTC取引のように、取引所を一切通さずに、一般人同士がセキュリティトークンを相対で取引することも容易になるかもしれません。そしてセキュリティトークンの取引所はそれらの交換市場として機能し、これまで流動化に長い年月を要したアセットが、組成から短期間に流動性を持つ可能性が出てきます。

各国の金融規制に対応したSTOを実施できる環境が整備されることで、適切な投資家保護の土壌が実現することで、機関投資家が管理する巨額の資金が、この新しい証券市場に流入することが期待されています。これも、金融市場のさらなる流動性の増加、取引手数料やスプレッドの削減といった投資家にとってのコスト削減に繋がります。

4-4-2. ノンストップな取引環境の実現

現在、ほとんどすべての仮想通貨取引所は24時間365日、ごくわずかのメンテナンスタイムを除いて、ノンストップで運営されています。これは、ブロックチェーン技術の強みとして、ブロックチェーン上のアセット(トークン)を第三者に移転し、その移転記録を誰もが正式なものと即座に認めることができるからです。伝統的な証券市場において、約定に要する期間の短縮は日々進んでいるものの、ブロックチェーンが提供する即時約定性は、証券取引所の運営を大きく変革する可能性があります。現在、多くの証券取引所は取引できる時間が限定されていますが、STOによって取引するアセットがブロックチェーン上のトークンとして扱われることによって、現在の仮想通貨取引のような形式で取引できるようになることが期待されています。

投資家にとっては、取引機会の拡大と捉えることができ、新たな投資家やマネーを呼び込む契機になります。洗練された取引プロトコルが開発されれば、仮想通貨の分散型取引所(DEX)のコンセプトのように、運営主体が不要で、ユーザーがプライベートキーを管理しながら、セキュリティトークンをトレードするような、分散型の証券トークン取引所も立ち上がってくるでしょう。

4-4-3. 所有権の細分化と分割所有権

現在の金融アセットは分割可能性がさほど高くありません。一般的に小さい単位に分割することは管理や取引コストを上げることに繋がるからです。例えば、株式の場合であれば一定の単元数を設けることが一般的です。

STOは金融アセットをトークン化し効率化することで、これまでよりもずっと小さい単位で扱うことを可能にします。例えば、ビットコインは1億分の1まで分割することができますが、セキュリティトークンでも同様の取り扱いが技術的に可能です。

小さい単位で扱えることで1単位あたりの価格を下げることが可能です。これは、投資の心理的・経済的ハードルを下げ、これまで参加できなかった、新たな投資家に門戸を開きます。

例えば、これまで大きなリゾートホテルの所有権を持つには、それを所有するファンドや投資信託を購入するしかありませんでしたが、その所有権をトークン化して小さく分割し、売り出すことで購入できる一般投資家の層は大きく広がります。仮に、100億円の資金が必要なホテル建設プロジェクトであれば、10万人から広く資金を集め、投資家は10000円程度からホテルの分割所有権としての性質を持つトークンを保有する「ホテルオーナーの一人」になるといったスキームも実現可能でしょう。このほかにも、飛行機や土地など、単価が高く流動性が確保し辛いアセットの所有権を分割しトレード可能にする、といったスキームも登場するでしょうし、すでに述べた絵画といったアート作品や音楽や映画の著作権などのセキュリティトークン化も考えられます。

4-4-4. プロセスオートメーションとコスト削減

セキュリティトークンの発行と運用において、スマートコントラクトは最も重要な役割を果たします。まず、必要な規制に対応するための手続きをプログラムすることによって自動化します。例えば、トークンの発行時に法的に必要なプロセスを確実に抑えるようプログラムを組み込んだり、セキュリティトークンを販売する投資家を適格投資家のみに限定したりするようなケースでは「適確投資家であると認証されたアドレスでなければトークンの送付を許可しない」といった制御を、スマートコントラクトによって実行します。プログラムで予め規定することで予測可能性と確実性を提供しコスト削減を実現します。

セカンダリーマケットでのトークンの流通に関しても、取引範囲や取引対象をスマートコントラクトで制御することが可能でしょう。レギュレーションで要求されるロックアップもスマートコントラクトで実現できます。

イーサリアムブロックチェーンにデプロイされたスマートコントラクトのコードは誰もが閲覧可能です。このことは、投資契約で定められた事項が、確実にプログラムで書かれているか、履行の確実性が担保されているかといったことの透明性を高めるとともに、報告や規制対応、そして監査に関わるコストを削減するでしょうコードが公開されていることで、不正を働こうとする者を牽制・抑制することで、結果としてリスク対応コストも軽減するでしょう。

そして、現在まで証券業務で莫大なコストが割かれているのが、バックオフィス業務です。STOでは配当や利息の支払、株式や所有権の名義変更等もスマートコントラクトで制御することで、自動化することを想定しています。実行された結果は、ブロックチェーン上に書き込まれます。スマートコントラクトが適切に実行できれば、バックオフィス業務のコスト削減を図ることができ、より迅速性と確実性を持たせることができるでしょう。特に利益に連動して配当を行うようなケースにおいては、プロジェクトの財務状況や獲得利益の把握までスマートコントラクトに組み込むことができれば、プロフィットシェアリングの完全なオートメーションが実現できる可能性もあります。

4-4-5. 新しい証券モデルの組成の可能性

セキュリティトークンのプログラマラブルな性質を活用して、これまでには存在しなかった新しいモデルの金融商品が誕生する可能性があります。単純なものではすでに触れた、「これまで証券化されなかったアセット」が挙げられますライドシェアの文脈では自動運転車を一台から証券化し生み出された利益をシェアしたり、日本でいうタイムバンクのような個人の時間やスキルを証券化するようなモデルも登場し得ます。細かくし過ぎると煩雑になるという性質があったアセットはトークンを利用することでよりシンプルに権利処理できる可能性があり、様々な応用が期待されます。

すでに、Bancorは複数のトークンをバスケット形式で扱えるプロトコルを開発し、ICOトークンの流動性の確保に寄与しています。また、セキュリティトークンに特化したデリバティブのプロトコルを開発するプロジェクトもすでに登場しています。すでに説明した分割所有権のコンセプトと24時間取引可能なセキュリティトークン取引市場の性質を組み合わせれば、より複雑で柔軟なモデルを構築できる可能性があります。IoTとの連動も注目です。

4-5. STOのメリットが起こす具体的な変化

前項では、STOがなぜ革命的と言われるのかを列挙して説明を行いましたが、より具体例を出して説明を加えます。ここでは一部の例を挙げますが、今後、特徴的な案件が出れば随時追加を行います。

4-5-1. スタートアップ企業の資金調達の変化

スタートアップの資金調達に劇的な変化が起こる可能性があります。これまでは主にエンジェル投資家やベンチャーキャピタルなどから調達していた創業当初の資金を、株式をセキュリティトークンにすることで一般投資家を含めたより広範な投資家層から調達するオプションが生まれます。また、一般的にスタートアップの株式は流動性が乏しいですが、セキュリティトークンで発行し、取引所に取引環境を設けることは、投資家に貴重な流動化オプションを提供します。スタートアップの株式トークンでも上場できる取引所が整備されれば、高額な手数料を要するIPOに代わるオプションとして重宝される可能性があります。技術的にはスマートコントラクトを用いて優先権や株主優待をトークンに設定するといった派生モデルも続々と登場するでしょう。

4-5-2. ベンチャーキャピタルやファンドビジネスの変化

ベンチャーキャピタルやファンドのビジネスも大きく変化することが予想されます。まずは自身の資金調達においてセキュリティトークンを用いて資金を集めることが可能になります。流動性確保の面で、スタートアップの資金調達と同様に、これまで長い年月を経てようやくEXIT手段を得ることができた環境が一変します。ファンドの利益を配当するのではなく、利益を用いて市場からセキュリティトークンを買い戻すことで投資家に還元するというオプションも生じます。実際にファンドやベンチャーキャピタルにセキュリティトークンを購入することで投資を行う投資家や機関投資家に対して、そのトークンを安全に保管するカストディアンサービスの提供も始まっています。

4-5-3. 不動産投資の変化

不動産投資にも変化が生じるでしょう。すでに不動産のセキュリティトークン化に特化したプラットフォームが立ち上がっています。すでに少し触れましたが、これまでの不動産投資は自らがオーナーになるか、不動産に投資する投資信託やファンドを購入するか、インデックスを購入するという選択肢が主流でした。セキュリティトークンを用いて対象不動産の権利を分割することで、多数の投資家で所有権を分割して「一部オーナー」に少ない金額の出資でなることができるようになります。そして、この所有権トークンも交換市場が整備され流動性を確保できるようになるでしょう。賃貸物件であれば家賃の支払いを仮想通貨で行えば、スマートコントラクトで収益の配当まで自動化することも可能になるかもしれません。オーナー同士で負担が必要な修繕費用の積立等も配当時に自動徴収することができますし、その金額がブロックチェーン上で可視化されれば、二次流通市場でトークンを購入しようとする投資家もデューデリジェンスの可能性があがり、取引コストを下げることができます。

4-5-4. デッドファイナンスの変化

デットファイナンスの領域でも大きな変化が生じる可能性があります。フィンテックの領域ではソーシャルレンディングによって金融機関ではなく、個人投資家が債権の引き受け手になる選択肢が生まれてきました。中小企業や個人の債権をインターネット上のマーケットプレイスで購入することができるサービスが誕生しています。セキュリティトークンはこのビジネスを流動性の確保や管理/運営の効率化という側面から大幅に進化させます。債権のトークン化による流動化と低コストでの取引環境の整備が実現することで、借り手には選択肢の増加とコストの削減をもたらし、貸し手にもより多くの選択肢と機会を提供します。債権の所有権はセキュリティトークンが証明するので、償還時にはトークンを持つ者の申し出に基づいて額面金額を返済し、期間ごとの利息の支払いは基準日にトークンを保有するアドレスに送金することで実行可能です。このプロセスもスマートコントラクトで自動化し効率化できる可能性があります。

4-6. STOがディスラプトしようとする巨大な市場

STOがディスラプトしようとする市場は大きなポテンシャルがあります。2017年にIPOの市場は2兆円(188Billion USD)でした。そして、株式市場は対象としてはごく一部であり、不動産や債権、デリバティブなどの金融資産や、ゴールドやダイヤモンド、アートや飛行機といったアセットまで、セキュリティトークン化ができるアセットの総額はとても大きなものになります。

昨年からすでにゴールドを裏付けとする仮想通貨(実態が不明なものも含む)などが流通していますが、すでに述べたようにゴールドの時価総額は800〜900兆円ほどです。世界の株式市場の時価総額を見ると、アメリカが31兆ドル(約3400兆円)、日本が6.4超ドル(約700兆円)、中国も日本と同程度です。他の公開市場、そして未公開株式市場も含めるとその総額は1京円とも言われ、大きなポテンシャルがあることを知ることができます。

セキュリティトークンのプレイヤーにインタビューをすると、世界には28京円(256兆ドル)程度の現物資産(Real-World Asset)が存在すると語られることもあります。

5.STOエコシステムを取り巻くプレイヤーたち

セキュリティトークンオファリングのエコシステムを形成するプレイヤー達が取り組む領域は多岐に渡ります。様々な分類方法が考えられると思いますが、本エントリーでは、以下のようにプレイヤーを分類し、該当する有力な企業とプレイヤーを紹介していきたいと思います。

 

  • セキュリティトークンの規格化(Security Token Standardization)
  • ベースプロトコル(Base Protocol)
  • 資産のトークン化及びイニシャルオファリング/マーケットプレース(Asset Tokenization and Initial Offering/Market Place)
  • セキュリティトークンの取引所(Security Token Exchanges)
  • マーケットメーカー/流動性プロバイダー(Market Making & Liquidity Provider)
  • アドバイザー/ソリューションプロバイダー(Advisory Firms/Solution Providers)
  • ステーブルコイン(Stable Coins)
  • カストディアンサービス(Custodian Service)

5-1. セキュリティトークンの規格化(Security Token Standardization)

5-1-1:Securtize : https://securitize.io/

Securtizeは企業やファンドが発行者としてセキュリティトークンを組成し、STOによって資金調達を行う為のクラウドソリューションをホワイトラベル方式で提供します。発行者が適法にセキュリティトークンを発行する為のリーガルサポートチームとシステムを提供するとともに、発行条件に応じてスマートコントラクトをカスタマイズできる機能を提供します。調達場面では投資家がKYCや適格性証明を行い、資金の払込と証券の引受を行うプロセスをカバーするダッシュボードが提供され、発行後もサポートされます。DSプロトコルという独自のセキュリティトークンプロトコルを開発しています。

Twitter:https://twitter.com/securitize_io

Telegram:https://t.me/securitize

5-1-2:Harbor: https://harbor.com/

Harborも同様にセキュリティトークンの発行者を支援します。オープンソースのプラットフォームであり、R-Tokenと呼ばれる独自のセキュリティトークン規格を提案しています。この規格は発行からセカンダリーマーケットでの流通まで、米国のexemption規定であるReg-DにおけるKYC/AML、税務やレポーティング、そして投資家の適格性の確認まで、規制に対応できるよう設計されています。セカンダリーマーケットにおいては適格性を証明した投資家間のみでトークンが流通することが担保されるようにプロトコルが組み込まれています。

Twitter:https://twitter.com/harbor

Telegram:https://t.me/HarborHQ

5-1-3:Polymath : https://polymath.network/

Polymathもまた、STOの代表的なプレイヤーで、セキュリティトークンの発行者のトークン組成及びディストリビューションをサポートするプロトコルの開発とエコシステムを構築に取り組んでいます。STOの領域で3年以上取り組みを継続しており、すでに「tokenstudio」と呼ばれる発行プラットフォームを公開しています。エコシステムの決済通貨としてPOLYトークンを発行しており、プラットフォーム上でサービスを利用する際の決済手段として用いられます。POLYはBinanceやBittrex等の仮想通貨取引プラットフォームで流通しています。独自のSTOトークン規格はST20と呼ばれ、こちらもセカンダリーマーケットでの流通をコントロールできる等、規制に沿う形で発行できるようERC20をカスタマイズする形でプロトコルが設計されています。

Twitter:https://twitter.com/polymathnetwork

Telegram:https://t.me/polymathnetwork

5-1-4:Swarm :https://swarm.fund/

Swarmもセキュリティトークンの発行プラットフォームです。すでに投資可能なセキュリティトークンがhttps://invest.swarm.fund にて公開されています。SwarmのプロトコルはSRC20と呼ばれ、他のプロトコルと同様に適法にセキュリティトークンを発行/流通できることを担保するとともに、トークンホルダーによる投票、プロフィットシェアリングといった要素が組み込まれています。Polymathと同様に$SWMというユーティリティトークンも持ち、投資案件への払込手段として、またプラットフォーム上でサービス利用する際の決済手段として利用できます。また、SWMには投票機能も組み込まれており、Swarm Foundationの規制や活動について投票を行うことができます。

Twitter:https://twitter.com/theswarmfund

Telegram:https://t.me/swarmfund

5-2. ベースプロトコル(Base Protocol)

Bancor:http://www.bancor.network/

Airswap:https://www.airswap.io/

0x:https://0xproject.com/

Kyber-network:https://kyber.network/

Hydro:https://thehydrofoundation.com/

これらの企業やプロジェクトは2017年にブロックチェーンや仮想通貨について調べていた方であれば、名前を聞いたことがあるものが多いのではないでしょうか。これらのプロジェクトは非中央集権型取引所(DEX)のオーダーマッチングプロトコルや、ICOトークンが流動性を確保する為のリレープロトコル、デリバティブの組成や即時のトークンスワップなどといった様々な用途に利用できる基礎プロトコルを開発しています。彼らはユーティリティトークンだけでなく、セキュリティトークンにも必要なベースとなるプロトコルを多数開発しており、STOのエコシステム、特にエクスチェンジ、流動性の確保、規制対応プロセスのオートメーションにおいてとても重要な役割を果たします。BancorのプロトコルはSPiCE VC傘下のSecurtizeの発行システムにも組み込まれる予定です。

5-3. 資産のトークン化及びイニシャルオファリング/マーケットプレース(Asset Tokenization Platform/MarketPlace)

STOによって資金調達を行うには、規制に沿う形で様々なアセットをセキュリティトークン化し、そのトークンを投資家に売出しする必要があります。以下のプレーヤーはプラットフォーム上のマーケットプレイスで、発行者が投資家に対してオファリングできる仕組みを持っています。すでに、セキュリティトークンの規格化のセクションで登場した4社に加えて、様々なプレイヤーが市場に進出しています。この領域ではセキュリティトークンを売り出す際に、基本的にブローカーライセンスが必要になります。事業関連性が高い金融の領域で活動していたプロジェクトが多い一方で、クラウドファンディング領域のプレイヤーがエクイティクラウドファンディングを進化させるべく進出している例もあります。Swarmのプラットフォーム上ではすでにリストされているセキュリティトークンに投資することが可能です。TemplumはAspenのリゾート開発のセキュリティトークンオファリングを支援しました。TokenSoft社も50カ国以上のレギュレーションに対応したSaaS型発行システムをすでに提供しています。そしてすでに紹介したPolymathやHarborも、すでに実績や多くの発行予定を発表しています。

Polymath: https://polymath.network/

Harbor: https://harbor.com/

Securtize :https://securitize.io/

Swarm: https://swarm.fund/

SmartValor:https://smartvalor.com/

Bank To The Future:https://bnktothefuture.com/

Templum:https://www.tradetemplum.com

Tokensoft:https://www.tokensoft.io/

NeuFund :https://neufund.org/

Start Engine:https://www.startengine.com/

NETKI:https://netki.com

INVESTREADY:https://www.investready.com

Securency : https://www.securrency.com/

5-4. セキュリティトークンの取引所(Security Token Exchanges)

tZero:https://www.tzero.com/

OpenFinance  : https://www.openfinance.io/

Mercury Trade:https://www.miami.exchange/

FinHaven:https://www.finhaven.com/

Kambio:https://www.kambio.io/

Smart Valor:https://smartvalor.com/

DSTOQ:https://dstoq.com

GBX:https://gbx.gi/

STOによってセキュリティトークンを売り出した後には、そのトークンを流通させ流動性を持たえるためのセカンダリーマーケットが必要です。セカンダリーマーケットとしてセキュリティトークンを扱う取引プラットフォームも続々とローンチされています、今回の執筆時点ですでに確認できただけでも、tZero、OpenFinance、Mercury Tradeの3社がサービスをローンチしています。これらのSTOエクスチェンジの一部は、自らもSTOを行い、エクイティをセキュリティトークンとすることで、そのオーナーシップと配当を得る権利を投資家に与えています。Binance等も同様に独自の取引所トークンを発行していますが、規制の兼ね合い上、ビジネスから得た利益を用いて市場に流通する独自トークンを買い戻す方法でトークンの流通量を下げトークンの価値を上げ投資家に還元する方法を採用していましたが、STOエクスチェンジは同様の方法もしくはトークンホルダーに配当を支払うことで還元を行います。

これらのプレイヤーの他にも、報道ベースではありますが、CircleやCoinbaseもこの領域に参入してくる可能性が言及されています。Coinbaseはつい先日新しい上場基準を発表しました。(https://listing.coinbase.com/)既存の仮想通貨取引所も自らライセンスを取得したり、ライセンスを持つプレイヤーと提携したりすることでこの領域に参入する可能性は非常に高いでしょう。フィリピンベースのCEZEXも本記事執筆中にローンチし、BitPRはインタビューを行いました。参考:https://bit-pr.com/cezex-security-token-exchange/

5-5. マーケットメーカー/流動性プロバイダー(Market Making & Liquidity Provider)

Octagon Strategy  :  https://www.octfinancial.com/

CUMBERLAND :  https://cumberland.io

セキュリティトークンのセカンダリーマーケットでの流通を支える役割を果たすのが、この領域のプレイヤーです。相対取引を仲介したり、取引プラットフォーム上でカウンターパーティになり、注文ボリュームを支えたりといった役割を果たします。

5-6. アドバイザー/ソリューションプロバイダー(Advisory Firms/Solution Providers)

STA(Security Token Advisors):  http://securitytokenadvisors.co/

Seccurency : https://www.securrency.com/

GALAXY : http://www.galaxy-bg.com/en/

ARGON GROUP: https://argongroup.com/

SPICE:   https://www.spicevc.com/

これらの領域では、STO実施における戦略の立案や必要なソリューションの紹介、初期資本の注入など、ファシリテーターの役割を担っています。STAは業界の全体観をつかめるスライドをウェブサイトにて公開しています。

5-7. ステーブルコイン(Stable Coins)

Tether:  https://tether.to/

True USD  : https://www.trusttoken.com/trueusd/

DIGIX DAO :https://digix.global/dgd/

CARBON  :  https://www.carbon.money/

Fragments:  https://www.fragments.org/

昨今、日本円やゴールドなどの現物資産に裏付けされた、ボラティリティのない仮想通貨であるステーブルコインが数多く登場しています。もっとも有名なのはUSドルに裏付けされたTether、TrueUSDなどが存在します。これらは一種のIOU的な建て付けで指定の銀行口座に発行された額面に相当するUSドルを信託しています。DIGIXが発行するDGXトークンはゴールドに裏付けされ、1トークンが金1グラムの価格になるよう設計されています。最近のニュースではユニオンバンクがステーブルコインを発行することを発表しました。(https://www.unionbankag.com/blockchain-banking/)

STOの文脈からも信頼のおけるステーブルコインは必要で、払込を行う投資家の負担軽減(ボラティリティや調達時のスプレッド)はもちろん、伝統的な金融商品をSTOの枠組みに組み込む際の商品設計においても重要です。例えば、ローンやデリバティブなどのデポジットを要する座組みや、変数を減らすことが必要な商品においてステーブルコインが必要とされています。この記事を執筆している間にも片手で収まらない数のステーブルコインがアナウンスされています。

5-8. カストディアンサービス(Custodian Service)

BitGO: https://www.bitgo.com

DACC(Digital Asset Custody Company) :https://digitalassetcustody.com/

Prime Trust: https://primetrust.com/

SIX Swiss Exchange: https://www.six-group.com/exchanges/

Coinbase Custody:  https://custody.coinbase.com/

Knox: https://www.knoxcustodian.com/

カストディアンサービスはSTOの文脈において非常に重要です。特に、巨額の資産を扱う伝統的な金融機関や投資家がその暗号通貨資産やセキュリティトークンを独自に保管することは非常にコストが高いです。この役割を担うのがカストディアンです。また、証券はその発行国で手続きを行う必要があるケースがあり、投資家に代わってその手続を行うのもカストディアンの役割です。セキュリティトークンは基本的にはカストディアンが管理し、投資家の指図に応じてエクスチェンジや取引相手に送信をするという運用が想定されています、BitPRチームはシンガポールコンセンサスで取材を行いましたが、カストディアンサービスのブースは非常に多かったです。

6.STO関連のレギュレーション

関連するレギュレーションとその変遷について、現在調査を進めています!

STOのデメリットや課題についてもまとめています!

次回の記事をお楽しみに!BitPRのツイッターをフォローして、最新記事の更新をチェックしていください!

Disclaimer: Investing in Initial Coin Offerings, cryptocurrencies, and digital tokens is highly risky and speculative. The material presented here is for information purposes only. This information presented here is not intended to provide any sort of investment advice, nor does it recommend any company, Initial Coin Offering, or digital token and should not be taken as the basis for any investment decision or strategy.

 

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